10月3日(日)、シネマクレールで映画「MINAMATA」を観た。
映画館から出たら、一緒に観た息子が、「これ、お母さん、知っとったん?」「これ、ほんとに日本であったことなん?」と聞いた。
…“知ってた”でも“知らなかった”…
「5年生くらいで社会の授業で習ったよ。SKYもきっとこれから習うよ」
日本の高度経済成長期に、チッソという会社の工場から、メチル水銀が排水と一緒に不知火海に垂れ流され、汚染された貝や魚を食べた住民が水俣病になってしまった。
チッソの工場では、プラスチックや化学繊維などの原料になるアセトアルデヒドという物質を作っていた。そこで発生した有害な有機水銀の一種がメチル水銀だ。
チッソの製品は当時の日本人全体が使っていたものだから、水俣病は、一人一人が自分のこととして考えなくてはならない問題だろう。
便利な暮らし、豊かな暮らし、平和な暮らしの向こう側で理不尽な被害に苦しむ人がいる。
写真ってすごい力を持っている。
ユージンが家族の写真を撮り、それを私が観る時、そこにいるのはただ「水俣病の人」ではなくて、
かけがえのない「人」、「娘」「息子」「お母さん」「お父さん」…が、生きている姿、愛されている姿、病に苦しめられている姿だ。
「写真は撮る者の魂を削る」というユージンのセリフがあった。
命を懸けてシャッターをきり、暗室で心を込めて現像する。
その仕事に圧倒される。
帰り道、カフェで息子とパンフレットを見ながら、話した。
パンフレットの中の、水俣病の青年がユージンにカメラを向けている写真を見て、
息子が、「この人は、水俣病の人怖くないんやな」と言った。
「そうやね。だから写真が撮れて、その写真が人の心動かしたんやね」と私は返した。
社長役の俳優の写真を見て、
「この人、水俣の人のこともppmって言ってたな。お母さん、覚えてる?コーラの瓶の話の時。海水の中の水銀はppmって言ってて、水俣の人のこともppmって言ってたな。あかんな」と言った。
「ほんまやね。微量で影響ないなんておかしいよね。苦しんでる人や訴えてる人がいるんやから、見なあかんよね」
息子「今も公害いっぱいあるよな。福島の汚染水の問題もあるし。最後に出てきた世界中の公害のこと、全然知らんかったわ」
「私も…」
この映画を観て、知らなかったということを知った。
それはつらいことだけれど、目を向けよう。私にできることをしよう。
安倍元首相が2013年に「日本は水銀被害を克服した」と言ったことを、私はこの映画をきっかけに知った。その発言には水俣病の被害者から反発の声が挙がっていた。
今も水俣病で苦しむ人がいる。家族を亡くして辛い思いをしている人がいる。
それは決してppmという単位で済ませられることではないんだ。
映画のパンフレットにユージンとアイリーンが写真集「MINAMATA」に記した言葉が載っている。
「過去の誤りをもって、未来に絶望しない 人びとに捧げる」
…未来に絶望しない…
ジョニー・ディップ演じるユージンが口ずさむ、ボブ・ディランの“Forever Young”、良かったな。